国東半島宇佐地域の6市町村全域が「世界農業遺産」に認定された。この地の「クヌギ林とため池がつなぐ農林水産循環」が評価されたからだ。国東一帯は降水量が少なく水不足になりやすい地域だが、先人は河川流域に1,200もの小規模なため池を造って用水供給システムを整え水田農業を可能にした。また、多くの里山林を落葉広葉樹のクヌギ林に換えシイタケ栽培を展開、森林から食料や肥沃な土壌を生み出した。
生物多様性とともに育まれる農林水産物
多くのクヌギ林・ため池群から形成される栄養豊富な水循環システムは、水稲やシチトウイの栽培を支え、多様な自然環境と相まって、河川上流域から里海までの豊かな生物多様性を保全してきた。例えば鳥類は日本全国で630種だが、狭いこの地で記録された鳥類は260種に及ぶ。また、豊かな水産物とともに国の特別天然記念物オオサンショウウオ、”生きる化石”のカブトガニも育んできた。
日本文理大学
杉浦 嘉雄
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